ちょっとした気づき。

突然思い立って、何人かのお客さんを連れ、寒々ルートの終了点へ向かった。屏風岩の肩、ちょこんと飛び出したテラスに座り込み、遠く瑞牆の森と岩を見下ろしてみた。とても良い眺めだ。夏の香りがする。空も晴れ渡って、風も穏やかで、かすかに沢の流れや、森の動きも感じられる。すっと肩の力が抜けて、小さな幸せを感じた。なんて些細な幸せなんだろう。

目を閉じて、少しだけの記憶の旅へ出掛けようと思った。

ほとんど初めてのクライミングをしている自分、怖がりならリードをしている自分、終了点でため息をつく自分、基部で意気込んでいる自分。
眼前のあらゆる岩でクライミングをしている過去の自分が、何人か見えたような気がした。
僕はこの山で重ねてきた記憶を、日常の中で忘れてしまっていたようだった。

そんな記憶達を一つ一つ思い出していると、なんだか今すぐに岩に触れたい気持ちになってきた。
「そろそろ戻りましょうか。また、登りましょう。」

無事に、楽しい講習の1日を終えた。

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ふと昔の友人や恋人を思い出して、懐かしくなる時がある。そして、(もちろんそれを契機として)何らかの経緯を経て、久しぶりの再会を果たす時が、ごくたまにある。
その時、人間関係が、(突如として)ある程度成熟していると感じる時がある。不思議だけれども、確かに「関係性」が自分の意志とは関係なく豊かになっている場合が、やはりある。

クライミングにも、そんな瞬間があるような気がした。

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