12月11日(月)に開催された、倉上慶大さんトークショー”千日登攀 EXTENSION”の様子です。

先日、倉上慶大さんによるトークショー「千日登攀 EXTENSION」を開催いたしました。遅い時間にもかかわらず、世界を舞台に活躍を続ける倉上さんの熱い話を聞こうと、関西など遠方からも多くの方達がジャムセッションに集いました。

ボルダリングをスタートさせた時の話からはじまり、瑞牆山での”千日の瑠璃(5.14a R/X)”の開拓、そして英国でのハード・トラッドクライミングにまつわる話。最後は昨年から2年続けてトライを重ねたヨセミテ・エルキャピタンの”The Nose(5.14a)”での壮絶な記録について豊富な写真と映像と共に語って頂きました。

トークショー序盤では、”千日の瑠璃”の2p目での想像を絶するフォールシーンや、気の遠くなるようなランナウトの中果敢にモアイフェースを登る倉上さんの動画が公開されました。目を覆いたくなるような、手に汗を握るような緊張感。かつて瑞牆山で実際に行われた歴史的なクライミングに皆さんの目が釘付けになっていました。カメラマンの萩原悟さんも会場に駆けつけ、倉上さんの究極的なクライミングを間近で撮影するという大仕事について語って頂きました。

そのまま話は英国のハード・トラッドへ。英国最難のトラッドルート”Walk of Life”で使用したいくつかの変則ギアを倉上さんが会場に持参してくれました。そのうちの一つである3カム。すっかりひしゃげたヘッドは、20mにも至るロングフォールを支えてくれたそうです。それでもそのルートを完登した倉上さんは、他にも数々のトラッド・ルートを登られました。40mのスケールでプロテクションがたった2つ。小さなノブにスリングが頼りなくかかっただけのプロテクション。英国のトラッドの厳しい倫理観、そして冒険へのあくなき探究心を垣間見ることができました。肉体的な負荷に加えて、精神的な難易度やその箇所までもが加味された英国クライミングのグレードについても丁寧に倉上さんは語ってくださり、学ぶこともとても多く皆さん興味津々。

終盤は、ヨセミテのビッグウォール・エルキャピタンに引かれた唯一無二の歴史的ルート”The Nose”のフリークライミングトライについて語って頂きました。倉上さんは、膨大な時間を瑞牆山を中心としたハードなトレーニングに充て、ついに先日全てのピッチをフリークライミングすることに成功しました。”The Nose”をフリーで登った人間は、初登から50年以上が経過しているのにも関わらず倉上さんを含めたった6人。その難易度の高さを物語っています。50kgにも達する重たい荷物を荷揚げしながら、時には空腹に耐え、あるいは雨に打たれながら、過酷な環境の中困難なフリークライミングに挑んだ記録は圧巻の一言でした。

マットを使わず、そしてグラウンドアップで挑み続けたボルダリングの10年間が、瑞牆山での高難度マルチピッチ、そしてハードなトラッド・クライミングへと昇華し、そしてついにビッグウォールクライミングの世界でも大きな成果へと繋がったその軌跡に、会場全員が大きく心揺さぶられました。静かに淡々と語る倉上さんの言葉一つ一つを聴き逃すまいと、皆さん真剣にお話に聞き入っており、本当に素晴らしい一夜となりました。

be water my friend.
be water make your color. by KEITA KURAKAMI

このような、クライマーズトークショーをジャムセッションでは今後も定期開催してまいります。次回は1月に予定しております。また詳細が決まりましたら告知いたします。ご期待ください!